デジタルトルクレンチとは|機能、使い方、精度、選び方について

デジタルトルクレンチとは

デジタルトルクレンチは締め付けトルクの値をデジタルで表示するトルクレンチです。

プリセット型の場合、規定トルクで「カッチ」と音がしますが、締め付けた時のトルク値は分からないため、デジタルを使うとより正確なトルク管理が可能になります。

またダイヤル型、プレート型の場合だと、メモリを見ることでトルク値を測定することができます。

しかしながら、メモリを見る角度によっては不正確になりますが、デジタルの場合、トルク値がデジタル表示され、データを保存することも可能なので、より正確な数値を測定することができます。

さらに、デジタルトルクレンチはどんどん進化し、ブザーや振動でのアラートや無線通信、PLC連携などさまざまな機能が実装されるようになりました。

今回の記事ではデジタルトルクレンチの機能や使い方についてご紹介していきます。

トルクとは

トルクはねじりの強さのことです。つまり、どれくらいの力でものを締めているかを表す言葉で、物理学的には回転軸の周りの力のモーメントと言われています。単位にはN・mが使われます。

ネジやボルトを使用する場合、締め付ける力が弱いと緩み、強すぎると壊れます。
では、どれくらいの力で締めれば良いのか?ということを数値化するときにトルクを使います。

例えば、この製品は◯◯〜◯◯N・mで締めるという具合です。

トルクを正確に知ることで製品の品質が向上するため、組み立ての際には必ずトルクを確認しなければならないほど重要な値です。

トルクの求め方

トルク (torque) は、ある固定された回転軸を中心にはたらく、回転軸のまわりの力のモーメントになります。

回転力は機械工学などで用いられる物理量で、「長さ(m)」×「力(N)」=「トルク(N・m)」で表されます。

Fは人の力や体重によって限界があるため、強い力をかける場合はrを長くすることで大きなトルクを生み出します。

トルクの単位について

トルクは力×距離で求められるため、使った力の単位と距離で表されます。

トルクの単位
・N・m:ニュートン・メートル
・kgf・m(キログラム・メートル)
・lbf・in(ポンド・インチ)

最も多いのはN・mですが、時代や国によって使っている単位がことなるため、締め付けの際は注意しましょう。
デジタルトルクレンチの場合、表示単位を自動で変換してくれるものもございます。

適正トルクとは

適正トルクは緩みが最も少ないトルク値のことを言い、ボルトの材質、大きさによって適正トルクは変わります。

ネジはネジ山とネジ山の間の摩擦力を使って緩まないようになっています。摩擦力は軸力と表面の摩擦係数で決まり、摩擦係数は一定のため、摩擦力の大きさは軸力に依存します。

ゆるく締めた場合は軸力足らずに緩みやすくなり、強く締めすぎた場合もねじが変形し、軸力が失われることで緩みやすくなってしまいます。

トルク不足の危険性

トルク不足の危険性は「緩みやすさ」と「オーバートルクになりやすい」ということです。

トルク不足だった場合に、ネジやボルトが緩みやすくなるのは想像しやすいと思いますし、その通りです。

トルク不足を心配するあまり、力いっぱい締め付けてしまうことがよくあります。
力いっぱい締め付けた場合、締め付けられていそうにみえますが、オーバートルクになり返って緩みやすくなってしまうことがあります。

オーバートルクの危険性

オーバトルクの危険性は「製品を破壊する」「緩みやすくなる」ことにあります。

締めすぎるとねじ山や座面に塑性変形が起こります。

ねじはばねの原理を利用した復元力によって締め付けを維持しているのですが、塑性変形が起こると復元力がなくなります。復元力がなくなるとねじの山と山の摩擦力が小さくなり、緩みにつながってしまいます。

また、締めすぎによって製品自体を破壊してしまうケースもあります。

トルクが適正でなかったことによる事故例

脱輪

破裂

落下

トルクレンチの役割

トルクレンチは適正トルクで締め付けるために使われる測定器です。

アナログとデジタルトルクレンチがあり、その中でもさまざまな種類があります。

アナログトルクレンチの仕組み

アナログトルクレンチは多く2種類あります。1つは金属の弾性力を使ったもの、もう一つはバネの力を使ったものです。

金属の弾性力を使ったものは手持ちの部分に目盛りが付いており、かけているトルクを目盛りを読むことで確認できます。

もう1つはバネを使ったもので、設定トルクになったらカチッと音がなります。1つのトルクにしか対応していないものと、トルク値を設定できるものと2種類あります。トルク値を知ることはできませんが、締め付けるトルク値が予め決まっている場合は便利なツールです。

デジタルトルクレンチの仕組み

デジタルトルクレンチは歪センサーによってトルクを算出しています。そのため、アナログトルクレンチとは違った方法になります。

設定トルクに達した場合にアラームがなるものも多くあります。アナログトルクレンチとは違い設定トルクは任意で設定可能です。

最新のデジタルトルクレンチはトルク値を見れるだけではなく、音、振動、光など複数のアラート機能、無線による設備との連携、リアルタイムでトルク値を表示する機能などが搭載されています。

デジタルトルクレンチのメリット、デメリット

デジタルトルクレンチのメリットは、正確なトルク値の確認、設定トルク値になった時のアラート、設定トルク値を任意で設定可能など、さまざまなメリットがあります。特に生産ラインで使用する際は、PCソフトウェアやPLCと連携し、トルクレンチの設定を自動で変更したり、締付結果を自動保存したりすることもできます。近年は多品種少量生産が圧倒的に多く、ポカヨケに最適です。

使用する上でのデメリットはほとんどありません。ただ、アナログトルクレンチと比較して高額になるため初期費用がかかってしまいます。しかし、それ以上に得られるメリットが大きく、導入する企業は毎年増えています。

最新のデジタルトルクレンチについて

機能紹介
(無線、内蔵メモリー、データ転送、電池など)
機能 内容 使い方の例
アラート 音、振動、光 設定トルク値になった時に、作業者が気づきやすい。
※音だけだと工場の騒音で聞こえないときがある
無線 PLCと連携
パソコンと連携
データの自動取得
設定トルク値の自動変更
締め付けトルクの値を自動で取得する。
ソフトウェアやPLCと連携し、品種や工程に応じて設定トルクを変更したり、締付回数をカウントし、締め忘れやオーバートルクを防いだりします。
内蔵メモリー 本体に6,000件のデータを保存 野外での利用が可能
角度検出 トルクと角度を同時に取得可能 回転角法締付や二度締めを検出可能
締め忘れ防止 ボルトが締まっているかどうか判定可能 ポカヨケ、品質の向上
電池 単3電池で、最大70時間連続可動 電池切れを心配する必要がなくなる
リアルタイム計測 トルク値と角度をリアルタイムで計測可能 製品開発などで便利
使い方
①トルクレンチ単独で使う場合
  • 下限、上限トルクを設定すれば測定することができます。
  • 本体にデータ保存可能なものは、作業完了後データを読み出して保存することができます。
②無線でパソコンと通信する場合
  • パソコンで付属ソフトを起動し、トルクレンチに接続すれば、パソコンで簡単にデータを受信することが可能です。
  • 専用受信機タイプの場合は、デバイスのインストールが必要です。
  • BluetoothやWifi接続タイプの場合は、ペアリングの設定等が必要になります。
③パソコンで製造支援ソフトを使う場合
  • 自社でソフトウェアを構築するか、パッケージソフトを導入します。
  • あらかじめ組立手順を登録する必要があります。
  • 一度手順を登録すれば、作業内容がモニターに映し出され、トルクレンチの設定トルクは工程毎に自動で変更されます。
  • 登録した手順データは熟練の技を盛り込めば、品質を一定に保つことができます。
  • ソフトウェアを使って作業を行えば、作業履歴は自動で保存されます。
④PLCと連携させる場合
  • シリアル通信が可能な受信機が必要になります。
  • シリアル通信でトルクレンチとのデータのやり取りを行います。
  • ラダープログラムを構築する必要があります。
  • トルクレンチからの適切な締付結果を受信した際に、その回数をカウントします。
  • 規定回数に到達したら、どのように生産設備と連携するか、その連携方法をラダープログラムへ落とし込みます。
デジタルトルクレンチの精度

デジタルトルクレンチの場合、±1~3%の精度で保証されています。
作業で使うものは3%、検査や検証等で使うものは1%の精度で保証されています。

また低トルク帯の場合は単位「N・m」で少数第3位か少数第2位、中、大トルク帯の場合は少数第1位まで計測可能です。

デジタルトルクレンチの選び方

目的に合わせた機能を持ったデジタルトルクレンチを選びましょう。

目的の例

  • トルク値の表示機能
  • 合否判定機能(音やLED等による通知機能)
  • ポカヨケ機能、もしくはポカヨケ装置との連携
  • 締付データの保存機能
  • 無線を使ってパソコン、タブレットやPLCとの連携機能

ただ単にトルク値を見たい場合は最も安いもので大丈夫です。
工場で利用し品質管理までしたい場合は無線付きのデジタルトルクレンチを選びましょう。

弊社のプロレンチはほとんどの機能を実装しています。特に弊社にしかできない内容は

  • PLCとの連携(シリアル通信)
  • バイブレーション機能
  • 6,000件のデータが保存可能

アドレックのデジタルトルクレンチの製品紹介

DPW10
(2.0〜10N・m)

全長:324mm
重量:0.39Kg

DPW25
(5.0〜25N・m)

全長:333mm
重量:0.39Kg

DPW50S
(10.0〜50N・m)

全長:333mm
重量:0.39Kg

DPW50
(10.0〜50N・m)

全長:375mm
重量:0.52Kg

DPW100
(20.0〜100N・m)

全長:430mm
重量:0.64Kg

DPW150
(30.0〜150N・m)

全長:430mm
重量:0.64Kg

DPW200
(40.0〜200N・m)

全長:573mm
重量:1.12Kg

DPW300
(60.0〜300N・m)

全長:766mm
重量:1.40Kg

DPW400
(80.0〜400N・m)

全長:1015mm
重量:2.45Kg

DPW600
(120.0〜600N・m)

全長:1220mm
重量:3.64Kg

DPW850
(170.0〜850N・m)

全長:1620mm
重量:6.26Kg

HTWS-1.5Ⅱ

全長:195mm
重量:0.09Kg

HTWS-3.0Ⅱ

全長:195mm
重量:0.09Kg

HTWS-5.0Ⅱ

全長:195mm
重量:0.09Kg

デジタルトルクレンチのヘッド
交換式ラチェットヘッド
交換式スパナヘッド
交換式メガネヘッド
デジタルトルクレンチのオプション
無線
角度計測
防滴
インジケータ
デジタルトルクレンチ用の無線受信機
ZC-101W
ZC-202W
ZC-401W
ZC-501W

ライター紹介
社名 株式会社アドレック
役職 企画・開発グループ長
専門 システムエンジニア
経歴 1995年東京の文系大学を卒業後、不動産マーケティングシステム会社へ就職。その後、新潟を活性化すべく、アドレックに転職。現在はプロレンチの開発部門の責任者で、日々アドレック製品の進化に邁進中、担当になってから12年が経過しました。
趣味は山登り。